元気スイッチ

3-12-1 daijin shunan-shi
yamaguchi 746-0018 japan
TEL.0834-64-1170

院長日記

2020.04.12

周南圏域の皆さんへ

周南医療圏(周南市、下松市、光市)での初発報告から1週間が経過しました。
某会社社員複数人の発生で始まり、結構動いているようでもあり、その後の報告が爆発的に増えないか、ビクビクしているところです。発生前と違い、今はコロナを念頭に診療しないといけないし、より疑わしい人では対応も神経使うので大変です。疑わしい患者さんのPCR検査を依頼したという友人は、結果が出るまでクリニックに寝泊まりしていると言いますし、対応した職員さんを休ませていると言い、こんなことでは心身ならびに経営的にも持たないし、あらぬ風評されるのが心配と言ってました。また、他の診療所の先生も、陽性患者を診察したわけでもないのに「あそこで出た」と風評され(私もその噂は聞いた)、職員さんも迷惑しているとのことでした。
皆さん、是非考えて下さい。一生懸命対応しようとして下さっている医療機関は皆さんにとっては助けになるのです。そのような診療所の先生が、「一生懸命やってあらぬ噂流されるならやってられない」となったら、どこにも行く場所がなくなります。残る良心的な診療所に患者が集まり、結局そこも潰れます(コロナが集まる診療所と風評される)。
ですから、今は双方が思いやりを持って、力を合わせ、共に戦い、乗り越えるという意識が必要です。
今回、私がここで申し上げたいのは、周南圏域がどれぐらい新型コロナ患者を受け入れることが可能か想定してますか?東京等の患者数見て、結構キャパあるんだなぁ〜なんて思ってませんか?ということです。
徳山中央病院は感染症指定医療機関ですから、隔離病床が12床あるのですが、これは周南医療圏、柳井医療圏、岩国医療圏分を合わせたものです。つまり周南医療圏分は4床。もし、3医療圏で同時発生したら周南医療圏では4人までしか入れないということです。
それ以上になったらどうなる?
次は各市町村の核たる医療機関、周南市:新南陽市民病院、下松市:周南記念病院、光市:光総合病院がそれに当たるかと思いますが(新型インフルエンザのときの協力医療機関を想定)、そこに収容するには、新型コロナの場合はワンフロアをコロナ専用にする必要があるかもしれません。つまり、ワンフロアで、新型コロナの患者さんと、一般の患者さんを一緒には診れないということです。
そうすると、新南陽市民病院の場合、4階・5階・6階が病床で、ワンフロア50床なので、約50人の入院患者さんには転院をお願いしないといけなくなるわけです。幸い落ち着いてて、そろそろ退院という方もおられるでしょうが、まだまだ不安定な状態で転院をしないといけなくなるかもしれません。これは半ば強制的に行われるでしょう。
「50人、入れるじゃん」と思う方、それは間違いです。ナースステーションなどの安全区域と病床の間に距離を置き、グレーゾーンも設けないといけません。患者さんが落ち着いており、絶対悪化しないことが前提とできるならいいですが、そうもいかないのはご承知の通り。そうすると多くの患者さんの収容は難しいことがわかります。
それでも、専用のスタッフでチームを形成しないといけません。そのため、通常の診療は相当制限されるはずです。つまり、今まで受けれてた医療が受けられなくなる可能性があるということです。
それでも患者が増えたらやむを得ません・・・そうしたらグチャグチャになっていきます・・・
今の東京や大阪はそんな状況と思います。
ですから、今の周南が10人以下で収まっているのを楽観視しないで欲しいのです。つまり、30人ぐらいになっても大丈夫?ぐらいに思ってたらとんでもない!ということです。感染力は2〜3人と言われますが、30人になったら次は60〜90人、その次は・・・増えるのはあっという間です。
周南圏域には東京のような医療資源はありません。都会ではホテルを1棟借りして収容することが言われていますが、周南でそれが可能でしょうか?そこにまた医療スタッフを派遣しなくてはいけません。どこからその医療スタッフを派遣するのですか?派遣できたとしても、出どころの医療機関の医療機能は保持できるでしょうか?また、そこに派遣される医療スタッフのレベルは担保されているでしょうか?チームワークはどうでしょう?
東京のようになったら、細かいことも言ってられません。目の前に敵が来たら対処するしかありません。戦争中、「学徒出陣」があったような状況です。実際、世界では医学生などを動員する事態も置きていると聞きます。
そうなったらおしまいなのです。そのような事態は都会とは違い、この周南圏域では、数十人レベルであっという間に起こる可能性があるのです。
報道では、当日の人数、積み上げの人数、緊急事態宣言による経済や教育現場のことなどばかりが報道されて、医療現場の仔細までは見えてきませんが、もうグッチャグチャだと思います。そして、現場は疲弊しきっていると思います。通常の医療は滞り、救えるはずの命も救えなくなってきているはずです。
そんな周南市にならないよう、周南圏域の医療キャパを知り、起きた波はすぐに鎮めるという意識を、高く高くもって頂きたいと思います。
そういう意識で、今の第1波をこのまま皆で力を合わせて抑え込めば、医療機関は休め、市民の皆さんも生活に少し穏やかさが戻ります、でも、また次は来るでしょう。でも、そのときは、また皆で緊張感を高め、グッと抑え込みにかかる・・・そんな強弱で、常に圏域の無理のない医療キャパの範囲で収束させる・・・そんな意識が大切かと思います。決して下の図のようにならないよう皆さんに意識して頂きたいと思います。