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院長日記

2024.02.23

突然の別れ

今日はとても驚き、辛く、寂しい別れがありました。
8年前に神経難病を発症された私と同世代の男性Aさん(50歳代)。昨年の夏以降、移動が困難となり、訪問診療の依頼がありました。神経難病はゆっくりとできないことが多くなり(羽をむしられるよう)、いよいよ動けなくなったら、その先は、食べれなくなり、しゃべれなくなり、息ができなくなっていきます。胃ろうしますか?人工呼吸つけますか?と究極の選択を迫られる、本当に辛い病気です。
この先、どうなることが予想されるか?をお話しし、心算りして頂き、現時点での希望(意向)を確認していきます。実際にそのような状況が出てきたら、改めて考え、皆で力を合わせて乗り越えていきます。「やる」=生、「やらない」=死で、生=楽・幸でもないのでとても辛い選択になります。その繰り返しで、矢継ぎ早に訪れることもあります。
そんなことを心配しながら、他職種の皆さんとも協力し、関わりましたが、秋以降は比較的落ち着いて年を越し、「なんだか心配したけど、最近は落ち着いているよねえ〜出かける計画はないの?」なんて話をしたところでした。
それが今朝、奥様が起きたら動かなくなっていた…と連絡あり、駆けつけましたが、すでに亡くなっておられました。
この神経難病の死因は突然死が2割と多いと言われていますが、予兆もなかったので、我々もショックが大きく、ご遺体の横で、何もできず、何も言えず、ご家族と同様、ご本人の手を握っているしかありませんでした。
Aさんは、「社会の役に立たないなら、早く死にたい」「延命治療は望まない」と言われていました。
改めて8年の経過を振り返ると、身体の不調が生じ(転けたり、階段が上がれなくなったり)、何故だ?何の病気だ?という状況があり、ようやく診断がつき、でも治る薬があるわけでもなく、さらに不自由となり、仕事を退職され…本当に辛かったろうと思います。家にいるようになり、家の中の移動も大変になり、這って動くこともできなくなり…排泄の世話もしてもらわないといけなくなり(ご本人は本当に嫌がっていました)…
我々は、最後がどのような形で来るのか?辛い最後じゃなければいいが…色々想像し、心配し、関わります。うまく最後まで対応できるだろうか?
そういう意味では、辛い局面ばかりがある中で(楽しい、嬉しいこともあったかもしれませんが)、苦しみが瞬間だったのはよかったのかもしれません。ご本人は奥様のことをとても気遣っておられたので、ご本人らしい優しさなのかもしれません。
ただ、きちんとお別れが言えなかったのはお互いに後悔していることだろうなと思います。とくに奥様、ご家族はお辛いだろうな、しばらく時間が必要だろうなと思います。
最近、小学生に、高校・大学生に「いのちの授業」をさせて頂き、高齢者には「人生会議」のお話をさせて頂くことがありました。
改めて思うのは、我々医療者は命を救うことがミッションですが、どうにもならないことがある…助けたくても助けることができない命がある…それは命には限りがあるからだろうと思います。
消えそうな命を大切に大切に…
どう大切にするかは人それぞれ。どうしたらいいかわからないことも多い。我々は一緒に悩み、考える伴走者なんだろうと思います。
ご本人が亡くなったら終わりではない。ご家族の中で生き続ける。今回のような場合は、亡くなったご本人を思うご家族のケアも必要。
「物語」と「ものがたり」…
死ぬと身体の機能は停止し、命は終わる。それが「物語」。
でも、家族や友人の心の中では生き続け、「ものがたり」は終わらない。
我々はそんなことも意識しないといけないのだろうと思います。
まだうまく言葉にできず、整理できませんが、Aさん、お疲れ様でした。ご冥福をお祈りします。